研究内容

主な研究プロジェクト
  @ シナプス刈り込みのメカニズムの解析
  A 膜電位オシレーションの解析
  B 体性感覚情報の伝達経路の解析
  C セロトニンが神経回路に与える影響の解析 



@ シナプスの刈り込みのメカニズムの解析

    
生まれたばかりの動物の脳は周りの環境に応じて柔軟に変化する能力を持っています。その礎の一つと考えられているのが、生後発達期の脳で起こる神経回路の再編成(シナプスの刈り込み)です。


  
神経細胞は軸索を伸ばして他の神経細胞にシナプスを介して結合し、複雑なネットワークを形成しています。神経回路が正確に作られることは、脳が正常に機能するために必須ですが、生まれた時すでに神経回路が完成しているわけではありません。生まれたばかりの動物では、神経回路は大人にくらべて若干不正確かつ過剰に形成されており、機能的にも未成熟な状態にあります(上左図)。生後の発育の中で、これらの過剰な結合の中から、機能的に必要なものが強化され、不必要なものが除去されていくことにより、次第に機能的な神経回路が形成されていきます(上右図)。私達は生後発達期シナプス刈り込みに関わる原理の解明を目指して、下オリーブ核−登上線維−プルキンエ細胞投射や、大脳皮質の神経回路の生後発達過程をモデル実験系として用い、刈り込みに関与する細胞レベル・分子レベルのメカニズムの解析や、幼若期神経回路の電気活動パターンの実態の解析を行っています。



主要なPublications
Nakayama et al., Nat Commun. (2018), Miyazaki et al., PNAS (2017), Ichikawa et al., PNAS (2016), Kawamura et al., Nat Commun (2014), Nakayama et al., Neuron (2012), Miyazaki et al., J Neurosci (2012), Ichikawa et al., J Neurosci. (2011), Hashimoto et al., PNAS (2011), Hashimoto et al., Neuron (2009),  Miyazaki et al,(橋本, 共同第一著者), J. Neurosci (2004), Hashimoto and Kano, Neuron (2003),  Hashimoto et al., J. Neurosci (2001), Ichise et al., Science (2000),  Kano et al., PNAS (1998), Offermanns et al.(橋本, 共同第一著者), PNAS (1997),  Kano et al., Neuron (1997), Kano et al., Cell (1995)


A 膜電位オシレーションの解析

    
延髄の下オリーブ核(inferior olive)は小脳プルキンエ細胞へ入力する登上線維(climbing fiber)の起始核ですが、神経細胞がgap junctionでお互い繋がれているなどユニークな特徴を持っています。またこの神経核では、サイン波状の周期的膜電位変動(subthreshold oscillation; STO)が起こることが知られています。下オリーブ核ニューロンのSTOは登上線維、ひいては小脳システムの活動パターンに影響すると考えられており、その発生機序を明らかにすることの意義は非常に大きいと思われます。私たちはSTO発生の基盤となる生理学的基盤として“Resonance特性”に着目しています。ある種の神経細胞の細胞膜は、特定の周波数を持った電流入力を増幅して電圧出力する特性があります。Resonance特性に関わる分子メカニズムを明らかすることを目指して解析を行っています。


主要なPublications
Matsuoka et al., J Physiol. (2020), Hashimoto, Neurosci Res. (2019), Matsumoto-Makidono et al., Cell Rep. (2016)


B 体性感覚情報の伝達経路の解析
    
体性感覚情報の大脳皮質への伝達については多くの研究がされていますが、小脳への伝達については多くが不明なまま残されています。私たちはマウスのヒゲ刺激の感覚情報処理に関わる神経回路を用いて、ヒゲの感覚情報が視床−中脳領域のarea parafascicularis prerubralis (PfPr)を介して小脳に伝達されることを見出しました。

主要なPublications
Kubo, J Physiol. (2018)


C セロトニンが神経回路に与える影響の解析
    
うつや自閉症などの発症には、脳内セロトニンが影響を与えることがよく知られています。うつのモデル動物の背側縫線核セロトニンニューロン(脳内セロトニン神経の起始核)からパッチクランプ記録を行い、電気生理学的な性質の変化を解析しています。






     所属

   広島大学 
大学院医系科学研究科
   
神経生理学


〒734-8551
広島県広島市南区霞1丁目2-3

TEL: 082-257-5125 (教授室)
   082-257-5127 (居室)
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